広告主のブランドを守り、ファーストパーティデータによる精度の高いターゲティング広告を実現するリテールメディア。「ポストCookie」だけではない。購買体験と広告を自然に融合し、新しい価値を創出する。販売機会の拡大、新しい顧客層の開拓、ブランドセーフティー、広告効果の可視化など、従来のデジタル広告の概念を覆す。日本を代表するECプラットフォーマーの楽天、メルカリ、そしてEコマーステクノロジーのグローバルリーダー、Rokt。3社により日本のリテールメディアが大きく動き出した。検討段階ではなく、導入し、その効果を享受する時期に入った。
※本記事は、日経クロストレンド2025年6月30日公開のPR記事より抜粋しています。
コロナ禍を経てECが普及。日本のリテール市場も急成長
顧客との接点をメディア化した広告プラットフォーム「リテールメディア」。店舗のデジタルサイネージから、アプリやECサイトにおける広告まで幅広い。リテールメディア市場は国内で急成長している。2024年は4692億円、前年比125%の成長率に達した。このうちEC事業者が4000億円以上を占める。大手EC事業者の広告提供に対する需要は高い。2028年には1兆845億円になると予測されている※1。
※1 CARTA HOLDINGSが実施したリテールメディア市場調査による
国内事業者の動きも活発化している。1億以上の会員基盤からなる楽天グループは、インターネット・ショッピングモール「楽天市場」を中心とするリテールメディアの伸張により2024年度の広告事業の売上高が2000億円以上に達した。月間アクティブユーザー数(MAU)約2300万人のメルカリも、2025年2月にリテールメディア事業に参入。さらに、EコマーステクノロジーのグローバルリーダーであるRokt(ロクト)は、2017年に日本法人を設立して以降、購入完了ページを活用したリテールメディアを推進。これまでに50社以上のEC事業者とのネットワークを築き、日本市場におけるデジタル・リテールメディアの普及と成長を後押ししている。

アカウントイノベーションオフィス ヴァイスジェネラルマネージャー 秦 俊輔 氏
リテールメディアの成長はEC化率※2との関係性が深い。「日本のEC化率は、米国や中国に比べてまだ低いのが現状です」と、楽天グループアカウントイノベーションオフィスヴァイスジェネラルマネージャーの秦俊輔氏は話し、こう強調する。
※2 すべての商取引の中でEC(電子商取引)が占める割合
「しかしコロナ禍をきっかけに消費者の購買行動が大きく変化し、EC市場の成長は一段と加速しました。楽天市場でも、生活者のオンラインシフトを背景に、出店企業が増加しています。特に、従来はオフラインを主力としていた大手メーカーなどが、ECを重要な販売チャネル/マーケティングチャネルとして再定義し始めています。ECの普及が進むことで、プラットフォーム上の購買導線が可視化され、ターゲティング精度の高い広告展開が可能となり、『売場×広告』のハイブリッド型メディア=リテールメディアとしての価値が高まっています。多くのユーザーが購入目的で訪れるECの特性は、広告主にとって極めて魅力的な接点です。EC化率の上昇は、リテールメディア市場拡大の大きなドライバーとなっています」

グローバルのリテールメディアで存在感を示すRokt。同社Head of Japan,VPの三島健氏は「米国のリテールメディア市場は8兆円規模です。日本市場の成長は一過性のものではなく、今後成長を続けていくと思います」と話す。

リテールメディアと従来型広告ではアプローチや考え方が異なると、メルカリHead of Ads Businessの赤星大偉氏は指摘する。
「ECサイトにアクセスするお客様にどう広告を最適化するか。大事なのは、お客様の消費行動を誘発し、購買に結びつける機会を創出すること。マス広告はもとより、インターネット検索連動型広告やSNS広告などでも実現できなかったことです。これを可能にするのがリテールメディア。媒体提供社と広告主とのコラボレーションがポイントとなります」
ポストCookieだけではない。買い物モードの顧客に接触
世界でリテールメディアが注目を集めたきっかけが、サードパーティCookie※3の規制強化だ。プライベート保護観点から利用できない場合、インターネットにおるターゲティング広告が困難になる。危機感を持つ企業は多い。サードパーティCookieに依存しない新たなマーケティング手法は、プライバシー保護が基本となる。
※3 利用者が訪れたWebサイトとは異なるドメイン、第三者(サードパーティ)から発行されるCookie
リテールメディアは、小売業が有する顧客情報を安全なシステム環境で分析し活用するため、買い物客に最も近いところで精度の高いターゲティング広告を実現できる。市場の急成長は、Cookie規制の影響を受けないという側面も大きい。セキュリティー観点では、SNS広告におけるアドフラウドや、ブランドセーフティーを担保できない課題にも対応できる。リテールメディアは、媒体提供するECサイトの買い物体験を活用し、広告の出稿を行うスタイル。広告主が望まないサイトに自社広告が露出し、ブランドイメージを損なうようなことはない。
一方でポストCookieだけが、広告主がリテールメディアの導入を進める意義ではない。本質は新しい広告手法の活用にある。商品を購入するモチベーションの高い状態の顧客に、関連性の高い広告を表示する。
「一般的に広告は、消費者がその情報を必要としていないタイミングで表示されると、ノイズとして受け取られることがあります。 しかし、ECサイトでの買い物中に表示されるリテールメディア広告は、購買意欲の高い状態で接触するため、自然に受け入れられやすい傾向があります。 商品の認知から興味・比較、そして購買に至るまでの流れを一つの場でシームレスに完結できるのは、リテールメディアならではの強みです。 これは従来の広告の概念とは異なる、“購買行動の文脈に寄り添った新しい広告体験”とも言えるアプローチです」(秦氏)

通常、インターネットを通じたショッピングは、検索から購入までリードタイムがある。「リテールメディアは、広告を見てからアクションまでの時間が非常に短い。広告主から見て即効性があると思います」と三島氏も付け加える。
購入するモチベーションが頂点に達するのが「購入の瞬間」だ。ここにRoktは着目した。「Roktのソリューションは、グローバルで900社以上、日本でも50社以上のEC事業を行う媒体社(ECサイト)を束ねる独自のアドネットワークにより、消費意欲が高まっているECの買い物客の『購入の瞬間』に、パーソナライズされた広告のオファーを表示します。AIを活用し、購買体験と広告を自然な購買体験のUIを通して自然に融合することで買い物客にとって価値ある情報の提供の場となり、高い効果が得られます」と三島氏。さらにこう強調する。

「ポイントは、AIがEC事業者のファーストパーティデータなどを学習し、その人に最適な広告を提示すること。一般的に、バナー広告はクリック率1%未満と言われています。Roktの場合、グローバルでクリック率平均5%となっています。クリック率だけでなく、成約率が高いという点も特長です。Roktは世界で活躍する企業が採用しており、日本でもエンターテインメント、トラベル、リテール、フードデリバリ―など様々な分野で名だたる企業が導入しています。ユーザー、EC事業者、広告主にとって三方良しのエコシステムを構築できます」
リテールメディアには、ECサイトの特性が表れる。メルカリは一般消費者が売り手となるケースが多い。「一般消費者が広告を出稿するというのは考えにくい」と赤星氏は話し、説明を加える。
「メルカリとしてリテールメディアで何を提供するべきか。広告というよりも提案に近いと思います。ゲームや電子コミックなどのエンタメ、人材関連など、モノよりサービスを売る商材を対象に考えています。メルカリは隙間時間で利用する人が多いことが分かっています。滞在時間が長い傾向もあります。検索キーワードや、属性データ、購入履歴などから、その人の興味を喚起する広告を表示することで、まさに『週末にフリマに来た感覚』を再現できると思います」
日本の広告構造を変革。リテールメディアの成長を自社に取り込むことが重要
Rokt、楽天、メルカリにおけるリテールメディアのキーポイントは、ECの買い物客の購買体験の中で実現する広告配信面の開発と、データ活用による消費者に価値あるオファーを選択し提供するアプローチだ。広告配信を行う企業の自社データのみでは実現し得ない、広告やマーケティングが可能となる。楽天の膨大な顧客データからは、購入を決定した理由だけでなく、非購買者分析も行える。メルカリの顧客データで見えてくるのは、趣味嗜好やライフスタイルだ。Roktは、AIにより広告担当者の発想を超えたオーディエンスを見つけ出し接触する。またデータに基づく広告効果の可視化を実現。広告投資の最適化に向けた有力な判断材料となる。

リテールメディアは、日本の広告構造を変革する。日本の広告主が取り組むべきポイントについて3者は、それぞれの角度から言及した。
顧客開拓と育成は、マーケティングの重要テーマだ。赤星氏は言う。「リテールメディアという新しい媒体には、新しいお客様が集まっています。メルカリには月間2300万人の利用者がいます。そこに対し、自社商品を訴求するためにデータを活用していく。リテールメディアはためらわず最大限に活用すべきです。仮説検証も行いやすいので、少額からでもトライするのが大きな一歩につながると思います」。
秦氏は、リテールメディアの進化においてAIの活用が今後ますます重要になると指摘する。
「AIを活用し、ファーストパーティデータに基づいて、顧客一人ひとりにパーソナライズされたマーケティングをリアルタイムで実現できる時代です。たとえば、検索した瞬間や、商品レビューを閲覧した瞬間、お気に入り商品をカートに入れた瞬間など、“その人の購買意図が高まるタイミング”を捉えた1 to 1のコミュニケーションは、まさにリテールメディアならではの強みです」
こうした変化を踏まえ、楽天としては「広告を出す場所」ではなく、「データを軸に、共に挑戦するパートナー」としての役割を担っていきたいと語った。
リテールメディアの真価を理解し、活用している日本企業は多くない。三島氏は、「リテールメディアの成長を自社に取り込むことが重要」と話し、こう続ける。「Roktは日本において50社以上のEC事業者ネットワークを構築し、そこでの流通額は2兆円近くにもなります。この国内EC事業者のネットワークは規模が年々拡大しています。同時に、消費意欲が高い買い物客へアクセスし顧客獲得を行おうとしている広告主も増えています。Roktのソリューションを活用することで、リテールメディアを自社の成長につなげる機会として活用することができます。グローバルスタンダードの革新的リテールメディアが、日本企業の成長に新たな道を開きます」。
Rokt、楽天、メルカリ、3社が牽引していく日本のリテールメディア。消費者の購入マインドに近い接点がメディアに変わる。新しい広告手法の可能性は計り知れない。
なお、リテールメディアの最新動向や広告主がどのように活用していくかについて議論する場として、Rokt、楽天、メルカリの3社による「Digital Retail Media Conference」が開催される予定だ。参加することで、日本におけるリテールメディアの現状と今後の展望を把握するための有益な機会となるだろう。
